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被災地への支援物資がたくさん入っていた5月ごろ |
入り口の周辺
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周囲片付けて掃除しました
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入り口は特に念入りに煤払い |
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群馬県沼田市「街なか」での出来事。
出来上がった作品を十数点展示場所に搬入し、予め構想していた通り展示する。
一昨年頃よりこの展示方法に不満を感じ始めていて、それが理由で昨年から個展を止めていた。
これが今回の「夢蔵」での展示の伏線になっていた。
私は作品を通して「きれいな色」を追い求めている。制作の現場できれいであっても、出来るなら展示場所でもさらにきれいになってもらいたいと望んでいる。そのためには思わぬきっかけが必要である。なぜなら「きれいな色」は思惑通りに仕事が運んでいるときには出会うことが少ないからである。制作時はその時の心身状態とか偶然とかが主にきっかけになることが多いが、今回はそれを展示場所で、また自己の外にも求める事となった。
それは群馬県沼田市で作品を発表するという偶然の機会が私にそうさせてくれた。
私が担当した展示会場・通称「夢蔵」は沼田市の「街なか」商店街にある明治中頃に建てられた古いりっぱな土蔵だ。土蔵の中は独特のこもったような空気で、壁はそもそも作品展示できるようには出来てはおらず展示には工夫が必要であった。蔵は市所有の建物で市民や商店街の活動に有効利用されるべくあるようであったが、ここ数年はあまり利用されていないようで、くもの巣は張りホコリの積もる様子は寂しいものであった。縁あって私がここで展示をするのである、それなら再びこの蔵が息を吹き返すようなきっかけになれればと思い、ここ「街なか商店街」を何かのかたちで私の作品の中に登場させたいと考えた。そこで商店街を歩き回ってさまざまな店構えや店先の様子、店内の様子などを撮影し、その写真を私の展示作品の中に取りこむことを試みた。古い店内を撮影しているときその店の歴史など興味深くも聞かせてもらえることもあり思わぬ楽しみが見つかった。
商店の写真はスライドショーとして映像作品にも仕立て、夢蔵の内部で展示している私の平面作品の中に投影し、そこからきれいな色の世界が広がっていくような構想で作品の展示にも取り組んだ。さらに私の作品の中にそれらの写真を配置することで、その影響をうけながら自分の作品の展開させていった。また蔵の立派な構造材や汚れ、内部の暗さなども作品の一部として取り込もうと試みた。それらの事により、自分の作品だけだと起こりそうにない組み合わせや展開が誘発されたいへん刺激的であった。
「畳、天井、絵とどこからどこまでが作品なのかがわからない」と評してくださった女性がおられた。私の工夫をもれなく感受していただけたようで私にはとても嬉しい評であった。
「商店街にはこんな表情もあるのか」「こうやって見ると風情がある」「ずいぶんさびれてしまった」などは
写真に注目した感想であったが、「風情がある」という感想は主に若いかたに多く「これを生かせればなあ」という感想も同時に聞くことが多かった。年配のかたは商店街のかつての繁盛期をご存知なので「さびれたなあ」という感想が多かった。商店街の写真を作品に組み入れたことで地元の鑑賞者には作品が親しみやすいものになったようだ。
作品にとても感動していただき「胸がどきどきしていて、一刻も早く家に帰って私も絵が描きたい」と言われた女性。毎回違う友人を連れてきて共に鑑賞しくださったばかりでなくチラシを百部近く持ち帰り沼田市内の喫茶店などに配布してくださった女性。もっとたくさんの人に見てもらおうという気持ちを持っていただいたことと厚意がとても嬉しかった。
放課後、帰宅の時間を気にしながら連日作品を見に来てくれた沼田小学校5年生の女子生徒たち。
ランドセルを置き畳の上に座って映像を見たり作品を鑑賞したりして、翌日には新しい質問を持参してきた。
鑑賞後に「実は私の子供が美大を受験中でして」と話された男性が違う日にその受験中の娘さんを連れてこられてしばらく歓談に興じたこともあった。
商店街の店主達と行政の足並みが揃わない再開発にふとため息をもらされ話をしていかれた商店主もおられた。少ない来客の時こそ話が進み偶然相手の心に少し触れることもある。
私の作品発表の方法に良い影響を与えてもらったのはもちろんのこと、作品を媒介に見知らぬ人と対話が出来ることの楽しさを改めて感じさせてもらった。
私が音のパフォーマンスで参加したコラボレーションは「夢蔵の前庭」「夢蔵の内部」「ダンススタジオ・オンパロス」の3ヶ所で催された。
そのひとつめ、フェスタ「美術部門」オープニングは「夢蔵の前庭」で行われた。ダンサー・コレオグラファーの七感弥広彰氏とダンサーの馬渕正子氏と私の映像と音とのコラボレーション。
「夢蔵の前庭」の横にある日本庭園を舞台に、「沼田祇園囃子」、「薄根ふるさと太鼓」と極めて日本情緒の強いものが先に演奏されたあとのコラボレーションであった。私の改造楽器はアメリカン・フォークでよく使用されるバンジョーを原型にした楽器ではあるが、弦の数、調弦、をはじめさまざまな改造が施されていて、音だけを聞くなら「琵琶」と間違えられることもある。そこでコラボレーションでは「弦楽器として通常に弾く」印象を強くしたものを主体とした。七感弥氏と馬渕氏の動きには関連させることなく、庭園の植木の並びや木の形などを目で追いかけながら音に変換したつもりで楽器を弾くことに終始した。
このコラボレーションで特筆すべきは七感弥広彰氏のアイデアであった。それは「祇園囃子」と「薄根ふるさと太鼓」とがお互いにあわせることなく次々と私たちのコラボレーションに参加して音のるつぼをつくる、そして一転静けさを取りもどしてコラボレーションを終っていくという大変素晴らしいものであった。私の絵画の仕事でいつも心がけている事に近しいところを絵の具ではなく人や音で試みることが出来るというまたとないチャンスともなった。それはとても興味深い表現が顕れたと感じた。独力では到底たどりつけないところに案内してくださった七感弥広彰氏にはとても感謝している。私個人に関してはこの最後が上出来だったのではないだろうか。-
日本庭園の中に大きな白い幕を張り投影した映像は屋外がまだ明るい時間帯であったのでかなり不鮮明なものとなったが、おおきな白い幕が美しい質感を見せていて時おり庭を吹きぬける風に美しく煽られていてたいへん良かった、更にそこにうっすらと映像の色彩がうつり偶然良い効果をだしていたと思う。頑張って清掃したので、「夢蔵」が味方してくれたものと思っている。
ふたつめは「わくわく体験ツアー」のうち、「夢蔵の内部」で行われたもので、 「夢蔵内部」と私と女性のダンスのコラボレーション。夢蔵の中でしか出せない音をと探し、畳をブラッシュスティックで擦って音を出すことにした。ダンスをする女性の足と畳とがこすれても同様の音がして、その新鮮さに驚いた。ダンサーが作る音と混ぜ合わせたり関係なく畳を叩いたり擦ったりできるという絶好の機会を偶然もらった。その場の勢いで壁に移行して叩いたり扉に移行して擦ったり、ぶら下がっていた針金が偶然鳴ったりと思わぬ音がたくさん見つかってたいへん面白いものになったと思う。
みっつめはオンパロスで行われた小宮伸二氏の竹によるインスタレーションと居上紗芽氏のダンスと私の音のコラボレーション。
ダンスの大まかな流れを居上氏から予め聞いてからのコラボレーションとなった。そのことは私なりにどこを山場にするのかということを念頭に置く機会となった。具体的には彼女が扉を開けライトアップされた小宮氏の作品が鑑賞者の目に映る時と、居上氏がそのために扉まで直線的に移動するところである。
本番では扉に移動する前に居上氏が天を仰ぐところがありとても良かった。
小宮氏の作品は竹林の中に作られた大小の十字架群で、小さなものも会場内にひとつありそれは居上氏がダンスに使用することになっていた。当日の朝、竹林に入って作品を観た時、私は東北の地震、津波によって失われた多くの命を思った。またこの十字架は鎮魂ための十字架でもあろうと考えた。
そこでコラボレーションでは鎮魂のために音を出すことに集中した。
会場は繊細な音などもよく聞き取ることが可能なダンススタジオで、演奏もとてもやり甲斐があった。古民家を改造して作られた建物だったので、その柱、梁などに刻まれた空気、歴史などを再生すべくその木目や傷跡に楊枝をトレースさせ、その音をアンプで増幅させる手法も使った。彼女の入場の時からしばらくトレースを続け緊張感を出そうとした。
居上氏の動きは静けさを感じさせるもので私の出す音を吸収しているように感じた。
音が消えていくところ、小さな音が響くところ、微妙な音でダンスに寄り添えたつもりであるがはたしてどうか。私の場所からは見ることができなかったが竹林の中のインスタレーションとの組みあわせも良かったのではないかと想像する。
足立智美氏の音響詩と私の映像作品とのコラボレーションは、導入部は足立氏が特に映像と彼のパフォーマンスとの組み合わせに神経質になることはなく力強く音を繰り出しながら独特の世界を展開していたので、その対比で映像がとても淡々と進行しているように見えると同時に無音が強調された様子がとても面白かった。足立氏の「言葉」の意味よりも音節や音に力点をおき、音響の世界を繰り広げていく方向性は、具体的なものが撮影されている写真であってもそれは、形や色だけを捉えたものであり、それらを使ってきれいな色」を展開に主眼をおく私の方向と会い通じるところもある。最後のほうで偶然足立氏の音声と映像が響き会い加速感がかもし出されたところがあり興味深かった。彼の力強い音が私の映像に向かいながら即興をするのを観たかったが途中で映像が切れてしまった。またの機会を楽しみにしたい。
「夢蔵の内部」での作品展示と3つのコラボレーションに共通していた点は、「そこにしかないものをどうやって自分の作品の中に取り込むか」ということであった。この点をこれだけ強く意識できた事は私にとって大収穫であり今後の私の活動に重要な示唆をあたえてもらった。しかもこれらは全て人との関係やコラボレーションで感づかされたことである。これはまったく重要なことだ。ほんとうにありがとう。
以上
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クリックすると拡大画像 |
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小宮伸二氏の竹による
インスタレーション
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ダンススタジオ・オンパロスの
裏庭の竹やぶ
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生えている竹をそのまま利用
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震災の犠牲者の鎮魂のために
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小さな音も良く聞こえます
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ダンススタジオ・オンパロスは
古民家を改造した建物
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の部屋の隅ほうでマイクロフォンの
ハウリングで音を出します
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静かな時間と演技
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古い柱や梁に刻まれた傷を
トレースして音を出す
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扉が開かれ
インスタレーションが飛び込む
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Field works と足立智美氏の
コラボレーション
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力強い音がスタジオ内に響く
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ユニーク音響詩を発声
観客をどんどん引き付ける
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小宮伸二
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七感弥公彰
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足立智美
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3.11 Art rescue
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Kohsho Nanami
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Tomomi Adachi
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居上紗芽
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